検認手続きのよくある誤解

 封がしてある遺言書が見つかった時に、勝手に開封すると5万円以下の過料に処せられます。開封せずに家庭裁判所での検認(けんにん)手続きをしなければなりません。

 遺言書の検認とは、相続が発生した際に遺言書を発見した人(もしくは保管している人)が、家庭裁判所に遺言書を提出し、裁判官や相続人の立会のもと開封し、その内容を確認する手続きのことを言います(民法第1004条)。弁護士が代理人となり、遺言書の検認手続きをしてもらうこともできますが、それなりの弁護士費用がかかります。

 検認手続きは、いつまでにやらなければならないという決まりはないのですが、亡くなった方の預金口座の解約や不動産の相続登記は、検認手続の済んだ遺言を提出しなければいけないので、検認が済んでいないと手続きが進みません。また、相続放棄の期限(3か月)や相続税申告の期限(10か月)は変わらないので、出来る限り早くやって、内容を確認することをおすすめします。

  この検認ですが、「1週間あれば出来るでしょう」などと、すぐにやってもらえると勘違いしている方が多いように思います。とんでもないです。最短でも1か月は必要になりますので、その後のスケジュールを考えて行動していただきたいです。

 一般的に、家庭裁判所で検認の申立をすると、以下のような流れで手続きが進んでいきます。

1)申立てをする

 以下の書類を持参して提出しなければなりません。

・申立書
・遺言者の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本

 また、お金も必要です。

・収入印紙800円分(遺言書1通につき)
・連絡用の郵便切手

2)検認期日の通知が届く

 提出書類に不備がなければ申立後1か月ほど経った頃に、相続人全員の住所宛てに家庭裁判所から遺言書の検認日の案内(検認期日通知書)が郵送されてきます(家事事件手続規則115条)。

3)検認の実施に行く

 申立人がいれば他の相続人がいなくても検認手続きは可能ですから、別の予定があったり、遠方だったりする場合には無理に参加する必要はありません。欠席した相続人に対しては、後日検認を実施した旨の通知がされますが、検認に参加しなかった相続人は、検認時の内容に対して不服申立てをすることは出来ません。

4)検認を行う

 裁判官と裁判所書記官、相続人の立会のもと遺言書が開封され、遺言書の日付や本文、筆跡、署名などの確認をします。筆跡や陰影が誰のものなのかといった質問がされたら、答えられる範囲で答えます。問題なければ時間はかかりません。

5)検認済証明書を発行してもらう

 検認手続きが終わると、検認済証明書のついた遺言書原本を返してもらえます。検認済証明書も1通につき150円の収入印紙が必要になります。この検認済証明書のついた遺言書は、銀行や登記所の手続きで必要になるので、紛失しないように注意してください。

と、それなりに時間と手間がかかるとご理解いただけたでしょうか。

 この検認手続きですが、あくまでも遺言の内容について形式が整っているかどうかを判断するだけです。この点も誤解が多く、遺言内容を家庭裁判所が法的に認めたわけではありません。遺言書が有効か無効かを証明するための手続きではないので、「検認を受けたから有効、受けなかったから無効」ではないと理解しておくことが必要です。遺言書の内容によっては「本人が誘導されて書かされたものだ」などと、モメることもあります。

 法改正で、自筆証書遺言保管制度が始まり、制度を利用すれば自筆証書遺言の検認手続きが不要になりますが、やはり有効無効を証明するものではありません。確かに本人の意思が反映された遺言書である、というお墨付きを得るなら、遺言・相続の専門家としては、やはり公正証書遺言の作成をおすすめしたいです。

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