孫への生前贈与と税制改正

 お孫さんはカワイイ。お伺いするお宅でお話を聞いていると、成人した子供よりも孫の方がカワイイという雰囲気はあります。以前と違って、財産を孫にも残したいという方も増えているように感じます。とはいっても、孫は法定相続人ではありません。だから、遺産分割の対象ではないです。そこで生前贈与という話になるのですが、気になるのは税金の問題。。

 個別具体的な税金の話は、税理士でない行政書士ではできません。基本的なお話しかできないのですが、基本的な話ですら難しいのが税金です。

 よく知られていることですが、1年間に受け取った財産の額が基礎控除の110万円以下の場合には非課税となります。しかし、税金逃れの意図的な暦年贈与として疑われるケースもあるようで、110万円を少し超える額にして少ない贈与税を納めるといったケースも多いと言われています。特に18歳以上の孫(あるいは子)に贈与する場合は特例税率が適用され、配偶者や兄弟姉妹に適用される一般税率に比べて有利になるのが大きな要因です。

 基礎控除後の金額が400万円以下なら、特別税率は20%となり、一般税率の30%より低いからです。

 また、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度の利用もあります。期限が23年3月末だったのが、教育は26年3月末、結婚・子育ては25年3月末まで、と税制改正で延長になりました。ただし、所定の手続きが必要になるのがネックのようです。

 金融機関で「教育資金管理契約」の締結が必要です。手続きには贈与者と受贈者が出席しますが、受贈者が未成年ならば法定代理人の出席が必要になります。

必要書類は、
贈与契約書の原本
戸籍謄本
印鑑
本人確認書類
新規申込手数料
新規申込手数料引落口座の通帳と印鑑

 税務署へも、贈与契約書・戸籍謄本・受贈者の前年分の所得が分かる書類の提出が必要でが、教育資金管理契約を結ぶ金融機関での受理により、税務署へ提出されたとみなされます。

 贈与金を使った場合は、教育資金として使ったことが分かる記録の提出が必要です。ATMの利用明細書や通帳のコピーになりますが、別途自分の口座から支払った場合には領収書などが必要おおになり、金融機関の営業所へ提出しなければなりません。手持ち資金で払ってから同額を出金する場合、利用明細書や領収書に記載された日付から1年後が提出の期限になります。教育資金口座から直接支払う場合には、領収書などに記載された日付の翌年3月15日までの提出となります。こういった面倒さ等で、利用が進んでいないのも実情のようです。

 今回の税制改正では、相続時精算課税制度で新たに年110万円の基礎控除が新設されました。暦年贈与の基礎控除とは別の非課税枠で、18歳以上の孫や子への贈与が対象になります。被相続人が死亡しても贈与財産は相続財産に加算されないのが特徴です。利用する場合は暦年課税か精算課税のどちらかを選ぶ必要がありますが、相続時精算課税の利用の促進効果もあるようです。

 注意しなければならないのは、教育、結婚・子育て資金の一括贈与の場合、財産を贈与された孫(あるいは子)が年齢の上限を超えた時に使い残しがあると税額に贈与税がかかるということです。

教育の場合:年齢条件は0~29歳、非課税上限額は1500万円
結婚・子育ての場合:年齢条件は18歳~49歳、非課税上限額は1000万円

 被相続人が死亡した時点でも使い残しがある場合には、原則として相続財産に加算されます。教育資金であれば、23歳未満であれば加算されませんが、改正によって4月贈与分から相続財産が5億円超の場合は年齢に関わらず加算されることになっています。

 税金というのは本当に複雑で面倒ですね。節税を考える人は多いですが、税理士でないと分からないことばかりだと思います。相続の専門家としては、子供より孫の方に財産を多く残す場合、孫間での贈与財産に差がある場合、などなどトラブルになりやすいので注意していただきたいです。

 私たち行政書士は、個別の税金に関しては税理士の専門域なので対応できません。しかし、相続に関することなら、何でも相談してください。「そうだ行政書士に相談しよう」という行政書士会のスローガンに恥じないよう、真摯にお答えします。ぜひ、頼れる街のかかりつけ法律家、行政書士をご利用ください。