不動産がある場合の寄付遺贈の注意点

 子供なし、配偶者なし、親も亡くなっていて一人暮らし。財産は残しても仕方ないし、賛同している認定NPO法人に遺贈すれば相続税はかからないので、遺言書で全財産を認定NPO法人に遺贈することにしたい。さて、これって本当に誰にも迷惑をかけない遺言書になるでしょうか。

 もちろん、遺贈先が現金のみの遺贈しか受け付けないのか、事前に確認する必要はありますよね。もし現金のみ受け付けているのであれば、財産に不動産がある場合、遺言書に遺言執行人を指名して、自分の死後に財産の不動産を売却して現金を遺贈するようにしておかなければなりません。

 この不動産を売却して遺贈する場合が問題、注意しなければならないことがあります。もし、法定相続人がいる場合には、死亡している段階で、不動産の名義が法定相続人名義となるからです。

 天涯孤独ではなく、兄弟姉妹、兄弟姉妹が亡くなっているときは甥姪が法定相続人となります。この場合、遺留分侵害額請求権がないので、遺言書通りに財産は処理されるのですが、一度、不動産の名義が法定相続人になるところが問題になります。つまり、不動産売却の翌年に納税する不動産譲渡税、売却益に対する翌々年に納税する住民税の増額分、健康保険料の増額分、そうした負担分が考えられていないケースがあるということです。

 不動産をそのまま特定遺贈した場合も、同じです。みなし譲渡課税になります。先祖代々の土地などで取得価格が不明だと、取得価格は時価の5%として計算されて、時価の95%が所得として扱われて課税されることになります。

 遺言執行者を指名するところまでは良いのですが、法定相続人の負担分を考慮して遺言執行者に行ってもらう、そうした遺言書の作成が必要になってきます。相続は百人百様、同じようなケースに見えてもすべて違ってきます。他の事例を参考にしても細部の検討が必要になってきます。

 今年の行政書士会のスローガンは「そうだ!行政書士に相談しよう」です。大丈夫!と思ったときこそ失敗も起きやすいものです。どんな小さなことでも気軽に頼れる街のかかりつけ法律家、行政書士に相談してみてください。