遺言書と異なる遺産分割をしたい

 遺言書の内容と異なる遺産分割が可能なのか。そんな質問をいただきました。残された家族の気持ちと関係なく遺言書を作成されたのかもしれませんね。独りよがりの遺言書にならないように、日頃から家族とのコミュニケーションは大切にしておくことが終活には一番大切なことだと思います。

 基本的には、遺言書の内容と異なる遺産分割は可能なのですが、注意が必要です。まず、遺言執行者がいる、いない、で違いがあります。

 遺言執行者がいない場合には、相続人全員、および遺贈があればその受贈者も含めた全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる遺産分割をすることも可能と考えられています。

 一方、遺言執行者がいる場合には、相続人には遺産に対する管理処分権がありません(民法1013条第1項)。管理処分権は遺言執行者にあります(民法1012条第1項)。遺言執行者は、相続人全員の合意によって遺言内容と異なる処分を求められても、遺言に基づいた執行をすることができます。相続人に意に反する結果となっても、本来の職務の遂行結果であり、相続人に対して任務違反とはなりません。

 ただし、相続人全員および受贈者全員が遺言書内容と異なる遺産分割を求めた結果、遺言執行者がそれに同意することは可能とされており、遺言執行者の同意の下にした処分行為は、民法1013条に反せず有効であるとされています。(東京地判昭63・5・31)

 後々のことを真摯に考えて作成する遺言書。異なる内容の遺産分割になってしまったら、ちょっと悲しい結果とも言えそうです。なかなか難しい問題ですが、無駄にならない遺言書づくり、相続専門家の活用を一度お考えいただきたいと思います。