銀行貸金庫の相続人による開扉依頼

 被相続人の死亡すると、貸金庫契約上の地位は相続人に承継されて準共有という状態になります。債権の準共有状態では、保存行為(現状の状態で財産の価値を維持するための管理行為)であれば、準共有者であれば単独で行うことができるとされています。つまり、各相続人は、一人で貸金庫の中身を点検することができるというわけです。しかし、そう法律通りに行かないのが現実でもあります。
 
 貸金庫の開扉にあたっては、金融機関の職員が立ち会うことができないので、中身を確認するだけなのか、内容物を持ち出していないのか、確認することができません。もし、内容物を持ち出してしまった場合は、金融機関自身の責任問題になりかねません。
 
 そこで、ほとんどの金融機関では、他の相続人全員の署名押印を得た開扉依頼書などの提出が求められます。他の相続人の同意が得られない場合、あるいは開扉依頼書は得られても内容物の持ち出しが認められていない場合もあります。その場合は、「事実実験公正証書」の作成を公証人に依頼して、公証人に立ち合ってもらって開扉するようになる可能性が高いです。公証人は立ち会うだけでなく、開扉から閉扉までの状況を公正証書に記録します。
 
 貸金庫から遺言書が見つかったというような話も聞きますが、こうした金融機関での手続きを考えると、少なくとも自筆証書遺言保管制度を利用するか、やはり公正証書遺言にしておいたほうが心配はないです。特に財産目録作成は、遺言相続においては大切なポイントだと考えます。なぜか、法事や葬儀等に比べて、遺言相続になると作業の意味が分かりにくいのが難点です。「なぜ、必要なの?」そんな気軽な質問からスタートしてほしいと思います。
 
 ちなみに貸金庫で遺言書が見つかった場合、その引き取りについては相続人の間で協議することになります。